• テキストサイズ

【マギ*】 暁の月桂

第10章 食事会での迷い


「そうだ。俺達で捕まえるんだ。俺はとある事情で、金属器が今は一つもない。だから、君たちの力を貸してくれないだろうか? 」

シンはそう言って、ハイリアと、モルジアナのことも見つめた。

アラジンだけでなく、ここにいる三人の力を望んでいるようだった。

なんだか大きな展開になってきて、ハイリアは戸惑った。

『霧の団』はこの国の内紛の元凶だ。そんな大きな争いの中心となっている人達と戦うことは、正直避けたかった。

なんのために、今まで目立たないように行動してきたのか、わからなくなってしまう。

「ちょっと待ってください、シン! こんな年端のない子どもに、危険なことをさせるわけにはいきません! 」

シンの申し出に、臣下のジャーファルが、すごい剣幕でシンに詰め寄ったが、シンはその様子を見ても表情一つ変えなかった。

「年齢は関係ないだろう。必要なのは、盗賊に相対する力があるか、ないかだ。 アラジンはマギだ。彼にはその力が十分に備わっている。そして、俺が見たかぎり、彼女たちも力は十分にあるだろう」

シンの言葉に、ジャーファルは納得のいかないような表情を浮かべながらも、黙り込んでしまった。

恐らくこうなると、もう誰が何を言っても聞かないということなのだろう。

「盗賊退治だって……どうしよっか? モルさん、ハイリアさん」

アラジンがこちらを見つめてきたが、ハイリアはすぐに返答は出来なかった。

頭が衝撃続きで混乱している。いつの間にか、大きな流れの渦中に巻き込まれていて、どう対処していいのかわからなくなっていた。

国の内乱の鎮火になんて関わったら、嫌だと思っても戦いの中で広く名が知れ渡る。

そんなことしたら、「ここにいる」と、アイツに印を示すようなものだ。

この前の盗賊退治だって、まだ規模が小さいものだったから関わったにすぎない。

モルジアナが砦に向かっていなければ、絶対に自分から関ろうなんてしなかっただろう。

せっかく手の届くところまでやってきた、平穏な生活を壊してまで安易な行動に移れるほど、優しい心情は持ち合わせていないのだ。
/ 677ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp