第10章 食事会での迷い
「……しかし、アラジン、君も『マギ』だとは……」
「君も? おじさん、他にも『マギ』を知っているのかい? 」
「ああ、知っているとも……。別に仲良しというわけではないがね……」
シンが他の『マギ』を知っていると聞こえて、ハイリアは耳を疑った。
マギは、世界でたった三人だと聞いている。シンが会ったことある『マギ』とは一体誰だろうか。
まさか、一番遭遇してはいけない人に、出会っていたのだろうかと動揺した。アイツの知り合いでは、あってほしくない。
「?? ……おじさんって一体何者なの? 」
アラジンが『マギ』だと聞いたとたん、今まで、誰にも教えなかった名を、シンは素直に明かした。
「今まで隠していて悪かったね。俺は、シンドバッドさ」
信じられないその言葉に、ハイリアは顔を上げた。
シンは、自信たっぷりにアラジンに向けて言ったようだった。けれど、アラジンは、なぜか名前を聞いてもぽかーん、としていた。
アラジンは、シンがどれほどの者か知らないのだろうか。
全くわかっていない様子のアラジンに、急に慌て出したシンが、自らの冒険記を掲げながら、必死に自己紹介を始め出した。
その様子を、ハイリアは遠くから青ざめた表情でみていた。
シンドバッドとは、迷宮ダンジョンを七つも制覇したことから、七海の覇王の異名をもつ、ハイリアが目指していた、シンドリアを建国した王だ。
傭兵や官史がお付きだなんて、どこの政務官かと思っていれば、王様だったのだ。
シンが「シンドバッド」なら、家臣がついて歩くのも、高級ホテルにタダで宿泊させてくれた財力があるのも、すべての理由が繋がる。
ジャングルでほぼ真っ裸で出会った変態男が、まさか自分が目指す国の王だったのかと思うと、複雑な心境だったが、こんなすごい人と知らずに、今まで普通に接して話していた事実の方が、衝撃的すぎた。
「うそでしょ……、あなたがシンドバッド……?! 」
「嘘じゃないよ。そうだ、アラジン。すごい『マギ』の君に、一つ頼みがあるんだが……」
「なんだい? 」
「今、この国を騒がせている盗賊、『霧の団』を捕まえるのを手伝ってくれないだろうか? 」
「霧の団を捕まえる?! 」
とんでもない申し出に、アラジンも驚いていた。けれど、シンは本気らしい。