第25章 緋色の夢 〔Ⅹ〕
「おまえは、親父どもに刻まれた堕転を促す呪印があるくせに、俺のルフに干渉した。
そのせいで、呪印が俺の黒ルフに宿る暗黒の闇を引き込んじまったんだ。黒ルフに干渉し続けたおまえは、俺のマゴイも引きこんで、堕転した俺に近くなったらしい。
ほとんど堕転してんだよ、おまえは。しかも、呪印がそれを早めてる。
おまえには、呪印の力が効きすぎるみてーだからな。あと数日もしねーうちに、呪印の闇に完全に呑み込まれるだろうよ」
ジュダルの言葉が突き刺さる。
── わたし……、堕転してしまうの?
乱れる心が黒の疼きを深くした。
ズキンズキンと強く締め付けるような痛みを感じて、胸を押さえこむ。
「痛むかよ? わかっただろう? おまえは、もう堕転から逃げられねーんだ……。はじめから、おまえは、この国と俺たちに利用されてたんだよ」
氷のようなジュダルの眼差しが突き刺さり、心をかき乱す。
「どうだ、ハイリア? ここまで知っても、まだ俺のことをいいやつだって思うか? 親父どもと、ちげーって言えるのか? 」
「やだ、やめて……! 」
もう、聞きたくない。
嘘だ、こんなの嘘だ。
── ジュダルがはじめから、私のことを騙していたなんて!
「堕ちろよ、ハイリア。おまえは、俺と同じなんだ」
見下ろされる赤い眼差しに、何度も首を横に振る。
「堕転がこえーか? 大丈夫だ、恐くなんてねーから。最後まで俺が面倒みてやるよ。俺と同じ場所に来ればいい」
涙が滲んで、嫌なことばかり言うジュダルの声から逃げるように耳を塞いだ。
その手を彼に掴まれて、無理矢理外される。
「耳を塞ぐな、諦めろハイリア」
「いやだ……! 」
信じたくなくて目を固く閉じると、涙がボロボロとこぼれ落ちた。
「聞き分けの悪いやつだな……。抵抗するだけ無駄だと思うぜ? 」
「いやだっ……! 」
「ほら、目を開けろよ。こっちみろ! 」
「…………」
「ハイリア! 」
イライラとしたジュダルの声が聞こえて、悲しくなる。