第25章 緋色の夢 〔Ⅹ〕
「もう、やめて……! こんなの嘘よ。私、堕転なんて絶対しない! ジュダルは、あの人達に騙されて言わされているだけなんだ! 」
強く目を閉じて拒絶していると、引きつれた感覚と共にビリリと嫌な音が耳に響いた。
驚いて目を見開いたそこに、大きく破り裂けた淡い青のスカートが映りこむ。
真っ黒なルフを湧き上がらせるジュダルに、服を引き裂かれていた。
「わかんねーやつだな、おまえは! もう堕転するしか道がねーんだよ! 」
怒りを宿す赤い視線に睨まれて、ビリビリと服が引き裂かれていく。
「やあ! やめてっ……! 」
こんなの嫌だ。こんなの違う!
ジュダルのこんな姿は見たくない。
ジュダルは、本当は優しいんだ。
こんなひどいことを、する人なんかじゃないんだ。
「お願い……、やめて! やめてよっ! 」
服を破くジュダルの手を止めようとしたとたん、その手を掴まれて押さえつけられた。
破られた服の切れ端で、両手をきつく縛られて目を見張る。
「そんなにわからねーなら、わからせてやる。おまえが誰のもんか! おまえは俺だけ見て、付き従っていればいいんだ! 」
苛立つ眼差しが注がれて、身体の上に覆い被さってきたジュダルに戸惑い、頭の中が真っ白になった。
彼を押し離そうと腕に力を入れるのに、乱暴な力に阻まれて、身体が自由にならない。
大きく引き裂かれた白い衣類が見えて、恐怖した。
「いやだ、ジュダル……! 」
彼の胸を力強く叩いても、泣き叫んでも、ジュダルは答えてくれない。
信じていたものが崩れていく絶望感に囚われる中、望まない彼の熱を感じて涙した。
拒絶したい感覚に身体が溺れていく。
胸の奥から湧き上がる闇の疼きは、深まるばかりで胸が苦しかった。
真っ暗な奈落の底に突き落とされた身体が、バラバラに割れ裂けて壊れていくようだった。