第25章 緋色の夢 〔Ⅹ〕
「おまえのマゴイは、暴走しちまって大変だったって言っただろ? おまえにはよぉ、今、二種類のマゴイが溶け込んで流れてるんだぜ」
「二種類のマゴイ……? 」
「おまえのマゴイと、俺のマゴイだよ。おまえが俺のルフに干渉し続けたのが悪いんだ。そのせいで、おまえに俺のマゴイが混じっちまったらしい。
性質の違うマゴイが、おまえの中で入り乱れて暴れてんだ」
指を交差させて、ジュダルが楽しそうに説明する。
「そのままにしてると、おまえはマゴイを使うたびにコントロールできねーせいで、嵐みてぇーなマゴイを吹き荒しちまう。身体を切り刻みながらな。
だから、そうならねーように、俺がおまえに魔法具を作ってやったんだ。おまえの首についてる、それをな」
ふいに、ジュダルに首筋を触れられてゾクリとした。
姿見の鏡に映っていた、赤い石のついた首輪のような銀のチョーカーを思い出す。
「それが、おまえの中で乱れるマゴイを抑え込んでやってるんだ。その影響で、おまえは今、マゴイが使えねー。
それ外すんじゃねーぞ? 外したら、またマゴイに切り刻まれるんだからな」
彼の言葉に、ハイリアは黙り込んで瞳を揺るがせた。
ジュダルが面白そうに口元をつり上げる。
「ったく、おまえは……。話を聞いてもらえなかったら、力づくで解決ってか? その考えは嫌いじゃねーが、もっとかしこくいこうぜ?
認めちまえよ、組織のことも、俺のことも。そうすりゃ楽になれるだろ? 」
「私に、この組織を受け入れろっていうの? 」
「それがおまえにとって一番いいだろうよ。細けぇーことなんて気にするな」
「……そんなのいやよ」
「わかんねーやつだな……。諦めろって言ってんだ。おまえに何もできやしない。金属器もない、マゴイも使えねーおまえは、ただの女だ。
そんなにわからねーなら、今のおまえに力がねーってことを、はっきり教えてやろうか? 」
そう言ってジュダルはハイリアの腕を掴み、身体を押し倒そうと力を入れてきた。
とっさに力をこめたが、なんだかいつもより力が入らない。
勢いがあるわけでもないのに、抵抗がほとんど意味をなさずに、簡単に押し負けていった。
あっという間に身体が後ろへ傾き、寝台に押し倒されて目を丸くする。