第25章 緋色の夢 〔Ⅹ〕
「一緒に逃げよう、ジュダル! 私が助けたいのはあなたなの!
こんな場所にいちゃだめだよ。あなたは、ここの人達に都合よく利用されているだけだわ。このまま、あんな危険なことを続けていたら、いつかきっと身を滅ぼしてしまう。だから……! 」
「バカか、おまえは。俺もあいつらと同じ、組織の一員だぜ? 」
冷ややかなジュダルの視線が突き刺さる。
「うそよ! あの人達に言われて、無理矢理やらされているだけでしょう? そんなの、もうやめてよ! 」
「俺は、俺の好きにやってるだけだ」
「違う、利用されてるだけよ! ジュダルは今までずっと、あの人達に騙されてやらされてきたから、自分でやっていることのように勘違いしているだけだわ!
あなたを大切だと思う人が、あんなひどいことをさせるはずがないでしょう? 」
「利用されてるやつが、おまえをこの部屋に閉じ込めんのか? いいかげん、わかれよ」
「どうしてわかってくれないの……? 」
「わかってねーのは、おまえだろ? 何回も言わせんな……、俺も組織の一員だって言ってんだろ! 」
苛立つ彼の眼差しが降り注ぎ、何度言っても耳を貸してくれないジュダルにイライラした。
「もういいよ、わかってくれないなら! 」
── だったら、力づくでもジュダルをこの組織から連れ出してやる!
ジュダルを見据え、ハイリアは身体をひねり、押さえつけられていた腕をすり抜けさせた。
素早く身体を起こして彼の腕を掴み込む。
魔導士も、マギも、杖さえ持たせなければ、ほとんどただの人に近い。
目を見開いたジュダルに向かって、容赦なくハイリアはマゴイを練り上げて、彼の腕に放った……!
はずなのに……、何も起こらない。
それどころか、マゴイが動く感覚すらなかった。
「なんで……!? 」
手の平を見つめ、マゴイを全く感じないことに戸惑う中、ジュダルの笑い声がした。
顔を上げたそこに、身体を小刻みに震わせて笑う彼の姿が見えて困惑する。
「くくくっ、あはははっ! やっぱりそうなるのかよ、おまえらしいな。無駄だ、むだ! 今のおまえに、マゴイなんて使えねーよ」
けらけらとお腹を抱えて、ジュダルが笑う。
「どういうこと……。私に、何かしたの……? 」