第25章 緋色の夢 〔Ⅹ〕
「ったく、ほんとおもしれーよな、おまえは……。俺を助ける? 紅炎たちに言うだー? おまえ、いったい何を見てきたんだ? おめでたいにも程があるぜ。
あの豚みてぇーな皇帝様は、組織にお優しい。紅炎たちだって、親父どものことはわかってんだぜ。それがどういうことかは、頭のいいおまえにはわかるだろ?
それでも、宮廷で叫んでみるか? 親父どもが間違っているって」
瞳を揺るがせるハイリアを見つめ、ジュダルが笑みを浮かべた。
こちらを嘲笑っているかようなその表情に、心が大きく揺れ動く。
「煌のすべてが、組織と深い関わりがあるとでも言いたいの……? 」
信じたくないことだけど、それなら色々なことが繋がり合って納得できてしまいそうで恐かった。
この組織に近づくなと紅炎が忠告してきたことも、白龍があの夜に言ってきたことも、皇后が宿していた黒いルフのことも、地下室で行われていた煌の武官に対する実験も。
この国自体が、組織と密接な関わりがあるのなら……。
「なぁーんだ、わかってんじゃん。そうだ、おまえ一人で何が変わる? 」
楽しんでいるような赤い眼差しが、深々と胸をえぐっていった。
目を疑いたくなるその眼差しを、ハイリアは負けずに睨み返した。
「……それでも、話せばわかってくれる人達はいるはずだわ! こんな危うい組織と手を結ぶことに、リスクを感じていないわけがない。
誰も反旗をひるがえす気がないのなら、私がやってやるわ。実験という名目で命を危険にさらされている人達を、私は見過ごしたままになんてできない。
あんなのおかしいもの! 組織を追い出すことができないというのなら、この国から出て行かなければいけないまでに、アタシガ、この組織ヲ壊しテ……! 」
疼いた黒のわだかまりが熱をもって湧き上がり、ドクンと強く脈打った。
── 何言ってるの、私……?
「ちがう……、違うの! そんなことが言いたいんじゃなくて……! 」
一瞬、囚われかけたおかしな感情を振り払い、こちらを見下ろすジュダルをもう一度見つめ直した。