第10章 食事会での迷い
無限の魔力で、絶望すら感じさせる創世の魔法使い。
ああいうのを『マギ』だと思っていたハイリアは、全く違う『マギ』の登場をうまく受け入れられずにいた。
膨大な魔力を振るっては、周囲に迷惑ばかりかけていたあの少年は、思いやりに欠け、悪ふざけの過ぎる、捻くれた性格だった。
それに比べてアラジンは、誰にでも優しく、素直で温かい、勇敢な少年だ。
全くもって真逆じゃないか。なんで同じ『マギ』なのに、こうも違うのだ。
「ハイリアさんは、『マギ』を知っているのかい? 」
いつもの平静さを失っているハイリアに、アラジンが驚きながらまっすぐと瞳を向けた。
思い出していた真っ黒な少年の姿が、アラジンと重なり、アイツとは対照的な真っ白なルフに戸惑った。
ハイリアは、それを頭から振り払うように、大きく首を横に振った。
「し、しらないわ! でも、そんな……、あの、アラジンの笛は、金属器じゃなかったの?! 」
「あれは、ウーゴくんの笛だよ」
アラジンは嘘をつくような少年じゃない。だから、本当のことを言っているのだと、わかっていた。
彼は迷宮攻略者ではない。『マギ』なのだ。
それでも頭がまだ混乱していて、こんな小さな優しい少年が『マギ』だということを、未だ受け入れられずに疑っていた。
「ハイリア……。君は、ジンの金属器を知っているのか? 」
シンの声に、ハイリアはハッとした。
気づけば、シンだけじゃなく、みんなが驚いた顔してこちらを見ていた。
『マギ』の衝撃に動揺していたせいで、周りの事なんてすっかり忘れていた。
余計なことを色々と口走っていたことに、今更ながら気づいたけれど、すでに発言を訂正するような、心の余裕は残っていなかった。
「別に知っていたって、いいじゃないですか! 」
ほとんど投げやりに、声を張り上げて言い放つと、ハイリアは下を向いて黙り込んだ。
その勢いに、呆気にとられたシンは、仕方なしに視線をアラジンへと戻したようだった。