第25章 緋色の夢 〔Ⅹ〕
「そうよ……。はじめの理由は、確かに違ったわ。宮廷を二分しているようなルフの色に、疑問をもったからだった。
黒ルフが気になって仕方がなかったの。だって、あれは私の過去にまで関わるものだから……。
あなたに聞こうとも思ったわ。でも、恐くて聞けなかった……。だから、いけないことだってわかっていたけれど、ルフに頼って探ることにしたのよ。
あなたのルフを借りて、『神事』で何が行われているのかを知り、『銀行屋』のことが掴めれば、黒ルフの秘密にもたどり着けると思ったから! 」
胸に抱えていた思いを絞り出すように、声を張り上げていた。
疑心が宿されたジュダルの赤い眼差しを強く見つめる。
「あなたのルフを借りたことは謝るわ。でも、やめられなかった。
だって、探れば、探るほど、『銀行屋』たちがしていることも、あなたが行う『神事』もおかしく思えて……!
あなたは、私に何かを隠してるみたいなのに……、全然、本当のことを教えてくれないし! 」
寂しそうだったジュダルの姿を思い出し、目頭が熱くなる。
「そしたら、ジュダル……、危ないことやらされてるんだもの……。あれが『神事』ですって? 笑わせないでよ……! あなたをルフの闇に閉じ込めるようなことが『神事』なの?
アジトに入り込んで、この組織が今までどんなことをしてきたのかもよくわかったわ。煌の武官に行っている実験のことも、闇の金属器のことも、私の家族を殺した黒いジンのことも……! 」
侵入したアジトで見た光景が脳裏をよぎり、怒りにも似た熱い思いが湧き上がっていた。
ぞわりと疼いた黒のわだかまり感じて、胸の奥に押し込める。
「『銀行屋』がやっていることは、間違っているわ。あなたにこれ以上、こんな危ない組織に関わってほしくない!
紅炎様たちにかけあって、この組織を追い出してもらいましょう。『マギ』であるあなたを守るためなら、きっと紅炎様たちだって動いてくれる。だから、一緒に宮廷に帰って……! 」
「……それで、紅炎に泣きつけってか? 」
感情がないような冷たい視線で、ジュダルが見下ろしていた。
「何を言い出すかと思えば……。それでどうなるってんだよ、ハイリア? 」
そう言った彼の口元がつり上がる。
くつくつと笑い始めたジュダルの声が耳に響いて、心が揺らめいた。