第25章 緋色の夢 〔Ⅹ〕
「うそ……」
「うそじゃねーよ、ほんとだ。まーいいじゃん。服なんてどれも一緒だろ? 」
たいして気にする様子もなく、ジュダルは笑みを浮かべていた。
失くした物が突然すぎて、上手く頭の整理がつかない。
ただ悔しさと、悲しさがこみ上げて、目頭が熱くなってきていた。
「なんだよ、おまえ……、そんなにアレが気に入ってたのか? そんなに欲しけりゃ別のやつを買ってやるって……」
不思議そうに顔を覗き込み、無造作に頭を撫でてきたジュダルの手を、ハイリアは振り払っていた。
驚いた赤い眼差しがこちらを見つめる。
「別のじゃ、だめなんだよ……」
喪失感がのしかかり、やり場のない怒りを感じて、拳を握りしめた。
ぽろぽろと涙がこぼれ落ち、頬を伝った冷たい雫が肌に跳ねる。
「ひどいよ、勝手に捨てるなんて……! なんで止めてくれなかったの……? 」
「なっ!? 知るかよっ……! こんなことで泣きやがって、いちいちめんどくせぇーな! 」
こちらを見つめていたジュダルの視線がそらされて、なんだか裏切られたように感じた。
さっきから決して彼が触れようとしないことが、疑問となって湧き上がり、腹立たしさと一緒になって口から飛び出していく。
「ねぇ……、ジュダル。なんで私のこと、こんな部屋に閉じ込めてるの……? 」
「ああ? なんだよ、いきなり……」
ジュダルは目を逸らしたまま、誤魔化して答えない。
「ここ、アジトの中だよね……? 」
「…………」
目を合わせようとしないジュダルの眉間に、わずかにしわが寄る。
「黙ってないで、答えてよ! どうして私はここにいるの? 」
反応を示さない彼に腹が立ち、自然と声が荒立った。
目を向けてくれないジュダルの服を掴み込む。
「今は朝なの? それとも夜なの? 私の金属器はどこに……? 」
ようやくこちらを見たジュダルの眼差しには、苛立ちが宿っていた。
それなのに、何の言葉も返ってこなくて悲しくなる。
「なんで答えてくれないの? ジュダルは私の味方だよね? 私を助けてくれたのも、あなたなんでしょう? お願い、私をここから出して……! 」
赤い瞳は何も言わない。
こちらを睨んでいるようにも見えるその鋭い眼差しに、彼の服を握る手が震え、答えがない寂しさに、ぽろぽろと大粒の涙がこぼれ落ちていった。