第25章 緋色の夢 〔Ⅹ〕
── 罰なら、仕方がないのかな……。
そう思った時、何かに強く腕が引かれた気がした。
温かいものに包まれて、うっすらと目を開いたそこにジュダルの姿が見えたのは、幻だったのかもしれない。
それでも、彼が助けに来てくれたようで嬉しくて、優しいその温もりに安心した。
やっぱり違うのだ……。彼だけは、あの人たちとは……。
── だって、あなたはいつも、私を助けてくれたもの……。
目を閉じて、深い、深い、まどろみの中に意識が落ちていった。
身体が重くなり、眠くて仕方がなくて、うずくまる。
何の音もしない閉ざされた空間は、不思議と煩わしくなくて、心地良かった。
それからどれだけ時間がたったのかは、よくわからない。
沈んでいた身体が浮き上がるような感覚がして、いつしか視界が開けていた。
ぼんやりと瞳に映ったのは、柔らかな淡いランプの明かりと、見知らぬ天蓋。
見覚えのないそれを不思議に思いながら、少しくらくらとする頭を起こして、ハイリアは辺りを見渡した。
気づけば、大きな寝台に寝かされていた。
それなりに広さのある部屋の内装は、宮廷で見かけるものとは趣向が違う。
豪勢に見える部屋の造りは東の国というよりは、西の国でみるものに近い。
「……ここ、どこ? 」
知らないその部屋に、ハイリアはだんだんと青ざめていった。
よく見れば、窓が一つもない部屋だった。
奥に見える扉に、取っ手がないことに気づき恐くなる。
── まさか……。
「アイム……! 」
呼び出そうとした金属器に宿る、自分の片割れのような存在は、その腕輪ごとどこかへ消えていた。
見当たらない金属器を慌てて探すが、寝ていた寝台の周りにも、側にある水差しの瓶が置かれた小さな机の上にも、銀の腕輪は置かれていない。
「うそ……、そんな……!? 」
最悪の展開が思い浮かんで寝台から飛び降りたとたん、ふわりと衣類の裾が揺れ動いて、服が変わっていることにも気がついた。
白地の半袖に、淡い水のような色をしたロングスカート。
着たこともない身体のラインが強調されたふわふわとした衣装に、ハイリアは顔を真っ赤にして身体を押さえこんだ。
「な、なんで服まで変わって……!? 」
腰回りの肌があらわとなっているせいで恥ずかしかった。
空気がやけにひんやりと感じてそわそわする。