第10章 食事会での迷い
切り出せた本題に、思っていたよりもシンは、真摯に考え込んでくれているようだった。
この感じは、何か良い情報を知っているのかも知れない。
良い答えを期待しながら、ハイリアが返答を待っている時だった。
突然、向かいの席に座るジャーファルが、一点を凝視して、飲み進めていたお茶を口から吹き出したのである。視線の先は、シンの後ろだ。
何かと思って振り返ると、アラジンの笛からウーゴくんの巨大な腕が、にょきにょきと出てきている所だった。
「おわぁー!! 」
誰かが叫んだのをきっかけに、レストランの客が次々に叫び、辺りは騒然となった。
混乱するレストランから、シンが急いでウーゴくんと、アラジンを引き連れて駆け出した。
その背中を追いかけて走り、ハイリア達もテラスを抜け、ホテルの裏側へと誘導される。
ホテルの外壁裏にある川辺まで来ると、シンはようやく立ち止まって、巨人の側に立つアラジンに向き合った。
「アラジン、君はいったい何なんだ? 」
到着するなり、息を切らしながらシンが声を張り上げた。
シンに正体を問いつめられたアラジンは、その場に座り込んだウーゴくんを気にしながら、さらりと、とんでもないことを言いだした。
「ぼくは『マギ』さ! 」
にっこりと笑って言ったその言葉に、衝撃を受けたのはシンだけじゃなかった。
「『マギ』ですって!? 」
目の前の少年が『マギ』だと知って、シンの後ろの方に立っていたハイリアは、思わず叫んでいた。
アラジンの周りのルフが、他の人と違っていることには気づいていた。
真っ白なルフ達は、彼の周りに自然と集まり、離れない。特異な体質なのだろうとは思っていた。
でもまさか、それが『マギ』の印だったなんて思いもしなかった。
『マギ』はルフに愛される。その意味がようやくわかった。
考えてもみれば、アイツもいつも漆黒のルフ達に囲まれていたではないか。
けれど、『マギ』というのはもっと強大で、圧倒的な力を従えた、恐ろしさを秘めた存在ではなかったのか。