第25章 緋色の夢 〔Ⅹ〕
寝ぼけた瞳に力を宿し、ハイリアのマゴイを探るが見つからない。
宮廷の中に存在する金属器を、ジュダルは急いで探し出した。
一つはすぐ側にある。
もう一つと、三つのまとまった光は奥の方に。
稽古場に一つ。離れた御殿に一つ。
あと一つが、なぜか見当たらない。
── どこだ!? なんであいつがいない!?
青ざめるジュダルの耳に、バタバタと騒がしい足音が響いてきた。
慌ただしく部屋の扉が開けられる。
「神官殿、急ぎ用が!! 」
血相を変えて飛び込んできた覆面の男の側に、見慣れた一羽の白ルフが弱々しく羽ばたいているのが見えて、何が起きたのかを悟った。
よろめきながら飛んできたその白いルフが、ジュダルの手にとまる。
黒く濁り染まっていったそのルフを、苛立ちながら握りしめた。
「わりぃー、紅覇……。あいつ、今日は行けねーわ……」
溜息まじりに紅覇を見つめて言ったとたん、幼くも見える紅覇の瞳が一度見開かれて、すぐに普段のやわらかな表情に戻った。
「なんだ、そういうこと……? 」
「神官殿、お急ぎを!! 」
「ああ、わかってるよ……」
急かす覆面の従者を鬱陶しく思いながら寝台から降りると、ジュダルは結べていない長い黒髪を、肩にのせるように巻きつけた。
側に立つ、紅覇の脇を通り過ぎる。
「ハイリアちゃんには、そういうことしないって思ってたんだけどなぁ……」
わずかに聞こえた紅覇のつぶやきが胸に突き刺さった。
「うるせぇーよ……! 」
腹立たしさを覚えた手に力が入り、勢いよく閉まった扉が騒がしい音をたてていた。