• テキストサイズ

【マギ*】 暁の月桂

第25章 緋色の夢 〔Ⅹ〕


「あ~、やっと起きたジュダルく~ん」

こちらを覗き込み、頬をつつく紅覇の姿に怒りが急速にこみ上げてきた。

邪魔をしてきたのは、こいつらしい。

見慣れた内装は自分の部屋のようだが、こいつを部屋に招き入れた覚えはない。

「ああ!? なんでおまえが勝手に入って来てるんだ! 」

頬をつつくその手を振り払いながら、ジュダルは寝台から勢いよく飛び起きた。

「ごめんねぇ~。ジュダルくんは朝が苦手って聞いてたけど~、本当なんだねぇ~! すごく不機嫌だぁ~」

紅覇が面白そうに笑っていた。

「うるせーよ! さっさと出ていけ! 」

「まあまあ、落ち着いてよジュダルく~ん。わざと起こしたわけじゃないんだしぃ~。ねぇ、ハイリアちゃん知らない~? 今日は合同での軍事訓練があるのに、来ないんだよねぇ~」

「ああ? ハイリアが来ない……? 」

「そう、だからぁ~、どこにいるか知らない~? ハイリアちゃんが稽古をさぼるなんて、ないことだからさぁ~」

にっこりと笑みを浮かべる紅覇の言葉を聞きながら、あいつが寝ていたはずの寝台をみると、その姿が消えていた。

あいつはマゴイがつきかけて、昨日の昼からずっとここで寝込んでいたはずだ。

そういえば、昨日、軍事訓練がどうたらと、言っていた覚えはあるが……。

あいつが稽古をさぼるはずがない。

しかし、あいつの姿はないという。

── どういうことだ……?

「もしかしてジュダルくん、ハイリアちゃんがどこにいるか、ほんとに知らないの~? ぼーっとしちゃってさぁ~。
 ここ数日、ハイリアちゃん少し変なんだよねぇ~。稽古の時間もずらすしぃ~、何してるのかなぁ~?
 軍事の勉強をしてるとか言ってたけど~、僕はジュダルくんが束縛してるんじゃないかって思ってたんだよねぇ~。でも、違うみたいだしぃ~」

稽古の時間をずらしていたことなんて、自分は知らない。

あいつがわざわざ稽古の時間をずらすだなんて、そんなことは今までなかったことだ。

紅覇はこういうことに、わざと嘘をつくタイプじゃない。

包帯の下に隠されていた見慣れない切り傷を思い出し、妙な胸騒ぎがした。

ハイリアは何かを隠しているようだった。

夢の中で傷つき、涙を伝わせていたハイリアの姿が脳裏をよぎる。

── あいつ、今どこに行って……?
/ 677ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp