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【マギ*】 暁の月桂

第25章 緋色の夢 〔Ⅹ〕


涙を流すハイリアの胸に刻まれた、八芒星の黒い輝きが増していた。

その闇の光が白の光を圧し始め、溢れる白の輝きが少しずつ深い黒へと染め変えられていく。

浸食されていく白の光を止めるように、白ルフたちがハイリアに集い、白の輝きを強くさせる。

白と黒の輝きが互いを打ち消そうとぶつかり合い、絡み合っていた。

『呪印の影響? いいえ、これは……。すでに暗黒の闇がこの子のマゴイに溶け込んで……。あなた、まさか……!? 』

そこまで言って、玉艶はハッと何かに気づいたようだった。

『ふふふっ、そう……。因果なものが生み出されたものね。面白い子……。あなたが堕ちるには、まだ早いわ』

にんまりと笑い、玉艶が泣き声を上げるハイリアに向けて長杖を振るった。

小さな白い身体が黒い光に包まれたとたん、杖先に集められた漆黒の闇がハイリアの呪印の中へと吸い込まれていく。

刻まれた八芒星から黒の輝きが消え失せると同時に、真っ白な身体から溢れていた白の輝きも消え、集まるルフ達のざわめきが途絶えていった。

辺りに吹き荒れていた嵐のような突風も急速に治まっていく。

『今は眠りなさい。あなたが黒く染まるのはもっと先でいいの。我らが手にしたあの子が力をつけるまで、息をひそめていなさい』

胸を押さえてうずくまるハイリアを見つめ、玉艶は真っ白な髪を愛おしそうに撫であげた。

『綺麗な子。あなたは逃げなさい。そして、いつか私の元へ戻ってくるのですよ。その暗黒の種を育て上げて、運命を恨み黒く染め上がればいいわ』

黒ルフを彷彿とさせながら、ころころと笑った玉艶に恐ろしさを感じたのか、ハイリアは身体を震わせて飛び退くように立ち上がると、もたれそうになる足を動かして走り出していた。

燃えさかる村から逃げ出すように、真っ黒な山中へと駆けこんでいく。

『たすけて……! だれか……! 』

黒い木々に覆われた闇の中を必死に駆けながら、幼いハイリアが銀の腕輪を握りしめる。

『おばあちゃん! おばあちゃん! 』

もういないはずの婆さんに助けを求めるように、暗闇に向かって何度も呼びかける声が響いていた。
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