第10章 食事会での迷い
「……まあまあです」
「お、昨日よりは俺を信用してくれたみたいだね! 」
にっこりと笑うシンを見て、ハイリアは困惑した。
「あなたが私たちに、危害を加えてくるような人じゃないってことは、何となくわかりましたから……」
「そうか、それはよかった! 」
わざとらしい笑顔を浮かべるシンを見て、やっぱりこの人はちょっと苦手だとハイリアは思った。
本心が見えなくて恐いのだ。何を考えているのか、さっぱりわからない。
けれど、全く信用できないワケでもないことも、昨日から感じ取っている。
正体はわからないが、官史や傭兵を連れている人物となると、どこかの国の重責を担う官の可能性もある。
この国の情勢にも詳しいのであれば、得られる情報は欲しかったし、もしも、協力が得られるなら心強い。
モルジアナの船や、アリババくんの捜索に一役買ってくれたら、儲けものだとハイリアは考えていた。
さりげなく話を仕掛けることにする。
「シンは、この国の人なんですか? 」
「いや、違うよ。ハイリアはどうなんだ? 」
すんなりと違うと言われて、少し残念に思った。
まず無いとは思ったが、この国の官である可能性を考えていたからだ。
「私もこの国の出身ではないです。シンも違うんですね……。なんとなく、街を案内してくれたり、バルバッドには詳しそうに見えたので、てっきりこの国の人なのかと思っていました」
ハイリアがそう言ってお茶を一口飲みすすめると、シンは意外にも懐かしそうに話し始めた。
「この国には、かつて俺の恩人がいたからな。少しなら詳しいのだよ。今や内紛で荒れ、すっかり変わり果ててしまったがね」
「『霧の団』でしたっけ? 」
「ああ、君たちも聞いたのか。その盗賊団が内紛の元凶らしいな」
思いの外、シンが話題に食いついてきたから驚いた。これは上手く聞き出せるかもしれない。
「はい、そのせいで私たちの目的だった船も運行していないようで、困っているんです……」
「船? 」
「シンドリアと、暗黒大陸へ向かう船です。内紛のせいで運行の見通しが立たないそうですから……。ここから行く以外、方法を知らなかったので……。何か情報を知りませんか? 」