第24章 緋色の夢 〔Ⅸ〕
「あははっ、やっと思い出した? 強かったなあ、さっきの君は……。こっちの攻撃なんか、気にもしないで立ち向かって来てさあ……。
……と言っても、僕も君に危害を加えるつもりは全くなかったんだけどね……。身体が巨大化したとたん何かの意識に呑まれてさ、自由がきかなくなったんだ。
せっかく手に入れた力だったのに……。コントロールできないなんて、僕が弱い証拠なのかな……? 」
壊された身体を気にもせず、少年は無邪気に笑っていた。
その寂しげな瞳に、胸が締め付けられる思いだった。
「ごめんなさい……! 私……、わたしが……! 」
腕の中で崩れていく少年の姿に、身体が震え、涙が溢れ出た。
「なんだよ、泣くなよ……。君はただ、攻撃してきた敵を打ち倒しただけじゃないか……」
「ちがうっ……! ちがうよ……! 」
こんな事をするつもりなんてなかった。
おかしかったんだ、あの時は。
何かの感情に囚われて、怒りが抑えられなくて……。
「ごめんなさいっ……、ごめんなさいっ……! 」
溢れ出る大粒の涙が、ひび割れた少年の頬にぽたぽたと落ちて、染み入るように消えていく。
乾いた肌に降り注ぐハイリアの涙を見て、少年はくすりと笑った。
「こんな僕に泣いてくれるなんて、君はやっぱり甘いなあ……。そんなんじゃあ、また覆面のおっさん達に騙されるよ? 」
「そんなのいいよっ……! あんまり話さないで……、あなたが、壊れちゃう……」
「話さなくても壊れるさ……。どうせもう最期なんだ……話していたいんだよ……君と」
「わたしと……? 」
目を見開いたハイリアを、少年は懐かしそうに見つめていた。
「君はさあ、どこか似ているんだ……、大切だったあの人と……。だからかなあ……、話していると……、すごく気分がいいんだ」
嬉しそうに微笑んで語る少年の身体に、ピシピシと大きな亀裂が走る。
彼の片目を奪うように入り込んだ亀裂に、目を覆いたくなった。