第10章 食事会での迷い
レストランへ到着すると、ハイリア達は、青い海の絶景がみわたせる開放的なテラスの席に通された。
そこには、シンと、部下の二人がすでに座って待っていた。
「遠慮せず、どんどん食べてくれ! 」
ハイリア達が到着するなり、机にどんどん運ばれてきた料理は、どれも見たこともない豪勢なものだった。
すべてシンのおごりだというのもあって、アラジンも、モルジアナも、隣で夢中で食べている。
さっきまで落ちこんでいたモルジアナも、食べて少し元気が出たようだったから安心した。
この地域にしかない珍しい魚や野菜、果物なんかが使われた料理は、今まで味わったことのない美味しさで、机に並べられていた沢山の料理は、気づけば三人であっという間に完食していた。
食事が終わったところで、シンが昨日の部下、二人を紹介してくれた。
官史だと思われる優男がジャーファルで、傭兵だと思われる赤毛の長身男がマスルールという名前らしい。
「モルジアナ、マスルールは『ファナリス』なのだよ。目元がそっくりだなぁ、お前達は! 」
紹介されて、モルジアナは驚きながら、マスルールを見ていた。
シンに言われるまで、全く気づかなかったけれど、よく見ると二人とも赤毛の色も、ネコのように上がり目になった目元の形もそっくりだった。
ファナリスとは、外見にそういう特徴があるようだ。
「……どうも」
マスルールに挨拶され、モルジアナはぎこちなく会釈した。
「……どうも……」
目元や髪の色以上に、たどたどしい言い方が、なぜかそっくりで可笑しかった。
シンに二人で話してこいと、背中を押されたマスルールが、アラジンに誘導されながら、テラスの脇で、モルジアナと対面している。
お互い顔を見合わせるばかりで、会話は滞っている様子だけれど、ぎこちない二人のファナリスの間には、アラジンが入っている。
明るい彼が一緒なら、きっと、どうにかなるはずだ。
「ハイリアは、楽しんでいるか? 」
アラジン達の様子を見守りながら、食後のお茶を飲んでいたハイリアに、隣の席に座るシンが声をかけてきた。
ちゃんとした服を着ているだけで、昨日よりマトモな人に見えるから不思議だった。
少し考えてから、ハイリアは答えた。