第24章 緋色の夢 〔Ⅸ〕
「あなた達……、砂漠の村でも、この実験を……? 」
かすれた声でハイリアは言った。
「砂漠の村……? 」
「あのダンジョンを出現させた村では? 」
「……ああ、ハイリア殿が攻略された。そういえば、あの村でもジンの実験を行いましたっけ」
「もしや、ご覧になられたのですかな? あなた様が、あの時にご覧になられていたとは知りませんでしたよ。しかし、あれは不完全体だったはず。こちらの完全体と比べては、話しにならぬほど不格好でしたでしょう? 」
「村を焼き尽くして暴走した、あの不完全体は、こちらの言うこともきかず、魔法でも修正が効かなくなりましたからなぁ」
「あの時は困りましたぞ。『マギ』が出した迷宮まで破壊しそうな勢いでしたし」
「あの日は迷宮に『マギ』も入られていましたから、処分を頼むにも待たねばなりませんでしたからねぇ」
「そういえば、あの不完全体はどうやって止まったのでしたっけ? 」
「ああ、よくわからない男が勝手に葬ってくれたのですよ」
「おお、そうでしたな。あれには手間が省けて助かりましたなぁ」
特に気にする様子もなく言った、覆面の男たちに衝撃を覚えた。
── この人たちが……、あの化け物を……?
焼けて倒壊した家屋の側で、変わり果てた姿で倒れていた仲間と、無惨に力尽きていた村の人たちの姿が浮かんで消えた。
── あの化け物のせいで、村の人達は……。ムトたちは……!!
胸の奥から激しい怒りの波が押し寄せてきた。
真っ黒な炎が渦巻き、黒の棘がズキズキと胸の奥で疼いて煮えたぎる。
「お前たちが、みんなを……!! 」
湧き上がる収まらない激情に怒り叫んだとたん、ハイリアは黒の意識に呑み込まれた。
── 許せない……、許セナイ……、ユルセナイ……!!
止まらない。
憎悪が収まらない。
目の前に存在する彼らの全てが許せなかった。
何もかも壊してやりたい。
修復など決して、出来ないほどに。