第24章 緋色の夢 〔Ⅸ〕
「オマエたちが……、オマエたちのセイデ……! 」
胸に宿る八芒星が黒く輝き出し、ハイリアから黒く濁り染まったルフが溢れ出す。
漆黒に限りなく近いその色を渦巻かせ、ハイリアは立ち上がっていた。
感覚を無くした身体は、痺れも、痛みも、足が地を踏みしめている感触さえ感じない。
ただ、目の前に存在するものを破壊したい衝動が、彼女を突き動かしていた。
「ほう、これは……! 」
「素晴らしい! あなた様は、ほぼ堕転していらっしゃるのですな! 」
「なるほど、それであなた様はあの扉を越えられて……」
「さすがは『十年計画』の例外なる逸材! 良き黒き王の器に……! 」
「……ウルサイッ、黙レ!! 」
騒がしい二人の従者を、青い炎を灯した銀の双剣が真っ二つに切り裂いた。
二人の従者が倒れ、割れ壊れた楕円形の人形が、地面に乾いた音をたてて転がり落ちる。
不気味な顔が描かれたその人形を踏み壊すと、ハイリアは虚ろな冷たい瞳で、黒きジンの動きを封じている六人の従者を見据えた。
漆黒の闇を、身体から湧き立たせながら。
「あの王はすでに堕転されて……? 」
「いいえ、まだ違うようです」
「しかし、あの身体に宿る暗黒の闇は……!? 」
黒く濁り染まったルフを渦巻かせ、そこへ黒ルフさえも引きよせるハイリアの姿に、覆面の従者たちは驚愕の表情を浮かべていた。
「ミンナ、アタシガ、壊シテヤルワ」
口元を吊り上げて笑った、ハイリアの握る銀の双剣がカタカタと震え出す。
『我が王よ、治まり下さい! このまま闇に堕ちるおつもりですか!? 』
アイムが声を張り上げたが、ハイリアは答えない。
六人の『銀行屋』を虚ろな瞳に捉えて歩き出していた。
『なりません! 目をお覚まし下さい! 』
銀の双剣から溢れ出したアイムの青い炎が絡みつき、ハイリアの歩みを制止する。
身動きを封じるその炎に顔をしかめ、ハイリアは闇の力に突き動かされるままに、言葉を口にしていた。