第24章 緋色の夢 〔Ⅸ〕
皮膚は黒く変色し、鋼のような光沢のある鱗が生え、四肢が長く伸びる。
鋭い爪を有した身体は大きく膨れ上がり、少年の原型をとどめずに巨体化していった。
肥大した背からは、黒いコウモリのような翼が生え、鋭い二つの角が生えた頭には、額の中央に第三の瞳が開かれる。
黒ルフを湧き上がらせながら、獣のような咆哮をあげた、少年の変わり果てた姿にハイリアは青ざめて固まった。
「そんな……、あれは……!? 」
あの姿は、まるでジンだ。
そう、金属器に宿るような。
「おお、これは成功ですな」
「黒き器となっただけはあるようですね」
「やはり恨みの強い者ほど、ジンの錬成は安定するようです。なりそこないとはわけが違う」
「どうですかな、ハイリア殿。すばらしいでしょう、我らのジンは! あれが我らが研究を重ねて作りあげた、闇の金属器の力ですぞ」
牢獄に立つ巨大な黒いジンの姿を見て、側を取り囲む覆面の男たちが嬉しそうに声を上げていた。
── あれが、金属器……?
巨大な力を持っていても、金属器は人の願いを叶える希望を秘めた物のはずだ。
あんなに禍々しくなんかない。
血を流して闇の金属器を取り込んだ少年は、黒いジンと成り果て、今では人の言葉も話さずにグルグルと唸りをあげている。
あれでは、ヒトから無理やりジンを作り出すための製造装置じゃないか。
瞳を揺らめかせて戸惑うハイリアと、黒いジンの鋭い眼光が合わさった。
蛇のような眼差しがニタリと笑い、巨大な口が大きく開かれる。
喉の奥から青白い光が見えた。
── え?
巨大な黒きジンから光弾丸が勢いよく放たれる。
それがこちらへの攻撃だと悟った瞬間、迫る光弾を避けようと足に力を入れたが、痺れた身体はまだ動かない。
── 間に合わない!
眩い青の閃光と熱量を感じて目を閉じた。