第24章 緋色の夢 〔Ⅸ〕
『ははっ、面白かったか? 』
『すごーい、いまの……ムトみたいに、ハイリアにもできるー? 』
『どうだろうな。頑張ればできるかもしれないが、これは簡単に身につくものじゃないんだ。長い間、練習しないと自由に扱えるようにはならない。
それになぁ、綺麗にみえても、これは遊びで扱うようなものじゃないんだよ。マゴイってのは、命の源だと言ったろう? 悪戯に扱えば、命を削ってしまうのさ』
『……でも、れんしゅーすれば……あのきらきら、けしたりできるんだ……! 』
ハイリアの表情が、何か良いものでも見つけたかのようにパッと明るくなった。
『ねぇ、ムト! これ、ハイリアにおしえてー! 』
目を輝かせてハイリアは、ムトを見る。
『おいおい、ハイリア。だから、これは遊びのものじゃあ……』
『ちがうのしってるもん。だから、おしえてよー! 』
膝元に座るハイリアが、ムトの服をわし掴んで身体をゆさゆさと激しく揺する。
「おしえてー! 」と何度も声を上げてせがむハイリアに、ムトも困り顔だ。
時々融通がきかなくなるこの頑固さは、あいつらしい。
だが、チビのハイリアの様子から察するに、こいつは自分が魔法で発していた光と、ムトがマゴイ操作で発したマゴイの光を、同じものだと勘違いしているように思う。
── 似ていても、それは別物だぜ?
覚えたところでそれは、マゴイ操作でしかない。
魔力の根本の発生源が同じだろうと、魔法を抑えられるようには……。
── ん? でも、今のあいつが扱うのはマゴイ操作だよな……。そういや、あいつって、あれを誰から教わったんだ? もしかして、こいつ……。
バカ殿に似た男を見ると、ムトは助けを求めるように、隣に座る小太りのおっさんに目線を送っていた。