第24章 緋色の夢 〔Ⅸ〕
「遅いじゃないか! いつまで僕を待たせるつもりだい? 」
そう言って怒鳴り叫んだ声の若さに困惑した。
「まあ、そう慌てずに」
「お約束のものはお持ちしましたから」
覆面の男たちがなだめるようにそう言って立ち止まった牢屋の中にいたのは、十代半ばくらいに見える褐色の肌をした茶髪の少年だった。
鉄格子をつかみ、不機嫌そうにこちらに睨みをきかせている少年の身体には、あちこちに痛々しいほどの火傷の痕があり、剃られた頭の首筋には刺青で番号が刻まれている。
足には枷まではめられていた。
── うそ……。こんな同じくらいの年の子が、囚人……?
見つめていた少年から黒くよどんだルフが溢れ出し、ハイリアは目を見張った。
漆黒とは違う、かろうじて白が残るルフが羽根をはばたかせて彼の周囲を飛んでいる。
強い憎しみを宿すルフの色だ。
「さあ、さっさと約束のものを渡してくれよ! 」
急かすように、鉄格子の合間から手を差し出したその少年を見て、覆面の男たちはニタニタと怪しげな笑みを浮かべていた。