第24章 緋色の夢 〔Ⅸ〕
「今回の改良によって、黒ルフの力が暴走し、作り上げた神兵のコントロールがきかなくなっていた問題も解決するはずです。それにより、神兵の不完全な成熟も抑えられるかと思います」
── 黒ルフ!? なんで金属器を作ることに、黒ルフが関係するの!?
「あとは被験体が、上手く堕転を果たすかですな」
「ルフの転換が上手くいかなければ、また不完全なジンとなりかねませんからね」
「黒ルフの力を効率よく扱うには、堕転を果たし、完全なるジンになってもらわなければ……」
「その点に関してはあまり心配ないでしょう。なにせ被験体はすでに堕転しかけている状態ですから、黒ルフの力を拒むこともないはずです」
覆面の男がにんまりと口元をつり上げて笑った。
「それは良い」
「急ぎの調達でしたが、良い物が手に入ったようですな」
「では、そろそろ向かいますか」
「そうですね、被験体も早くしろとうるさいようですし……」
「おや、おや……、黒き器となれれば良いですがねぇ」
にたにたと笑う従者たちが、かけていた椅子から立ち上がり、机の上に置いていた漆黒の剣を手に取った。
ぞろぞろとどこかへ移動し始めたのを見つめながら、よくわからない彼らの言葉にハイリアは一人、戸惑っていた。
── なに、ダテンって……? ジンになるって、どういうこと……?
この人たちはこの黒い金属器を作り出すために、いったい何をしているのだろうか。
あの漆黒の剣で、これから何を行うつもりなのだろう。
金属器の実験とはなんだ?
そこに黒ルフが関わるのはどうして?
被験体っていったい……?
疑問が沸々と湧き上がり、頭の中が混乱して整理がつかない。