第24章 緋色の夢 〔Ⅸ〕
── まさか、魔法を使って金属器の模造品でも作りだそうとしているの? でも、実験って……?
武具を作っているのだとしたら、「製造」という言葉が出てもいいはずなのに、彼らはなぜか口々に「実験」とばかり話す。
金属器の模造品を作るのに、何かの実験が必要だというのだろうか。
「それで、改良型はどう手直ししてみたのです? 」
一人の従者が言った。
「共同開発で得た金属器と同じ魔法式を組むのでは、ルフの力を阻害してしまうことが明らかになりましたし、魔法式の偏りが見つかりましたから、今回は大幅に修正して魔法式の組み方自体を変えてみました。
これで動力源となるルフの力も効率よく回り、発動の際に暴走するようなことも抑えられるかと……」
広げた一枚の紙を示しながら、覆面の男が言う。
そこにはよくわからない数式が書かれていた。
「ほう……、確かにこちらの魔法式の方が形に乱れがないですな」
「良いですね。前の術式よりも無駄がなくなったように思います」
「そうおっしゃっていただけると、考察を重ねて改良を施したかいがあります。そして、こちらが前回の結果も踏まえて改良を施した闇の金属器となります」
── 闇の金属器……?
机の下に腕を伸ばした覆面の男が、布に包まれた長い物を取り出した。
巻かれた布が外されたその中から、闇のように黒い剣が姿を現す。
従者が囲む机の上に置かれた漆黒の長剣には、刃に八芒星の魔法陣が刻まれていた。
アイムが宿る、銀の腕輪に刻まれたものと同じものだ。
── この人たち、本当に金属器を作ろうとして!?
模倣どころじゃない。形と姿だけなら、すでに本物の金属器とそっくりだ。
本当に、全く同じものを作り出そうとしているのかもしれない。
でも、この黒い剣に使われている鉱物はいったい何だろうか。あんなに真っ黒な金属なんて、今まで見たことがない。