第24章 緋色の夢 〔Ⅸ〕
「やっと来られましたか」
「待ちくたびれましたぞ」
「すみませんね、お待たせ致しました。新入りの者と共に行っていたものですから、少し時間がかかりましてな」
「おや、そうでしたか」
「……ほう、ではそちらの方が」
「新入りの方というわけですね……」
集まった従者たちにじろりと見られて緊張する。鼓動が速まるのを感じながら、軽く会釈をしてみた。
「これが前回の実験データと、改良後の研究資料になります」
覆面の男が、従者たちが囲む机の上に運んできた書物を置いた。
ハイリアもそれに習うように隣に分厚い書物を置くと、机を囲んでいた従者たちが持ってきた書物に手を伸ばし、中から資料を取り出しはじめた。
星の図形や数式の書かれたものが、いくつも机の上に広げられる。
「ほう、これが噂の、前回の実験データから見つかった魔法式の偏りですか」
「結果は失敗していますが、確かに実験を行った成果はあったようですね……」
「金属器の力の均等は緻密に組んでいたはずでしたが、まさかこんな場所の魔法式がルフの力を阻害していたとは驚きですな」
「今までの暴走も、ここに原因があったのでしょうか? 」
「その可能性は高いかと……。金属器の安定性にかけていたのも、ここの魔法式の偏りに原因があったのかもしれませんね」
資料を見ながら話しだした従者たちの会話を側で聞いていたが、全く内容についていけなくて、ハイリアは戸惑った。
従者たちは、まるで「金属器」を作っているような口ぶりで、魔法の内容らしいことを互いに話している。
金属器はダンジョン攻略者の中から、ジンに選ばれた者のみに与えられる武具だ。決して作り出せるようなものではないはずなのに。