第24章 緋色の夢 〔Ⅸ〕
『ありがとう、だいじょうぶだよ。いまは、さみしくないもん。あなたやさしいんだね。どこからきたのー? 』
ハイリアの声に反応して、ルフが鳴き声を上げる。
『そうなんだ、おやまをこえてきたんだね。そこにおっきな、おいけがあるのー? ハイリアもみてみたい。はねがあったらとべるのになあー……』
ピィーピィーと鳴き声を上げたルフの声を聞いて、ハイリアはまるでその言葉がわかるかのように、くすくすと嬉しそうに笑っていた。
── まさか、ルフと話してやがるのか……?!
そんな馬鹿なことがあるかと思いながら、信じられない光景に驚いていた時、ガサガサと草が踏みしめられるような妙な音が後ろから聞こえてきた。
音に気づいたハイリアと共に後ろを振り返ると、そこにはいつの間にか黒装束の二人組が立っていた。
顔の半分を黒の布で覆い隠している怪しい男たちは、幼いハイリアを見るなり口元をつり上げて笑っていた。
『こんな場所に子どもが一人とは……、実に都合がいい』
『騒ぐルフたちを追って来たかいがありましたな。マゴイの多い、良い素体のようです』
笑みを浮かべたその男たちから、漆黒のルフが溢れ出し、ジュダルは目を見開いた。
── こいつら……!?
『おじちゃんたち、だあーれ……? 』
手にとっていたルフを放ち、ハイリアは不安そうに立ち上がって男たちを見つめた。
黒装束の男たちは、何も答えずにじりじりと迫ってくる。
ようやく身の危険を感じたらしいハイリアは、慌てて村の方へと走り出したが、あっという間に、駆け込んできた黒装束の男の一人に、腕に抱え込まれてしまった。