第24章 緋色の夢 〔Ⅸ〕
『なんでハイリアだけ、みんなとちがうの? こんなの、もうやだよー……、ハイリアがわるいこだから、こんななの? 』
── こいつ……、もしかしてコレが魔法だって気づいてねーのか?
自覚がないから、魔法を上手く扱えていないのかもしれない。
そういえば、村の大人たちも、こいつを見て「狐憑き」だとか馬鹿なことを言っていた。
東方では魔法の理解の欠片もない奴らがまだ多いと聞いたことがあるが、この農村にいる奴らも、そういう素人どもばかりなのだろうか。
ハイリアを除け者にしていたガキどもを思い出し、何となく気に入らなく感じて腹立たしさを覚えた。
吹き荒れていた白い風は、何をきっかけとするわけでもなく、突然ぴたりと治まった。
消えた荒風にほっとしたのか、魔法を吹き荒して疲れたのか、チビのハイリアは荒れ果ててしまった草原の上に寝転ぶと、大きなため息をついていた。
側にひらひらと飛んできた白ルフを見つけて掴み取り、カゴように手の中に閉じ込めて、その中で羽を休ませる白ルフをじっと見つめる。
手を開いても飛び立たない様子をみせた白ルフの翼に触れると、指で何度もその羽を撫でていた。
『おばあちゃんはね、ルフであそぶなっていうの。みんながいるところでは、ルフをしらないふりをしなさいって……。
だからね、みんなのまえではね、がんばってみえないふりするの。でも、すっごくさみしいんだー。
だって、ルフがいなくなっちゃったら、だあーれもハイリアとあそんでくれるひと、いなくなっちゃうもん……。どうしたら、いいのかなー?
おばあちゃんにだまって、ルフとあそぶハイリアは、きっとわるいこ、なんだよね……』
晴れない表情をしながら語りかけたハイリアに返事をするように、白ルフはピィーピィーと鳴き声を上げていた。
その声を聞いて、ハイリアは嬉しそうに微笑む。