第24章 緋色の夢 〔Ⅸ〕
── 干されてやんの……、なんでこいつこんなになってんだ?
疑問に思う中、一人歩くハイリアの脇を村の大人たちがすれ違った。
じろりとこちらを見てきた目つきは、何か嫌な物でも見つけたような視線だった。
『また、白っ子が一人でおるな』
『当然じゃろう、あの白子は狐憑きにあっておるからな。童たちも恐がりおる。大婆様は必死に白子の力を抑えとるらしいが、あの童のまわりは良くないことばかり起こってばかりじゃ』
『そういえば、この前は、白っ子に突き飛ばされて頭から血を出した子がいたらしい』
『わしの息子も怪我させられたよ。大婆様は普通の子と同じように育てられておられるが、あれは親に見捨てられた白子じゃ。まとも童なはずがないわい。わしは息子に遊ばんように言い聞かせておるよ』
『あの白っ子が来てから、村にくる妙な連中も増えたしな。人さらいも、盗賊も、前はこんなに多くはなかったはずだ』
『それも白子の疫病神のせいに違いないて……』
『なんでこんな忌み子が俺たちの村に……』
チビのハイリアに聞こえるのも気にせずに、村の大人たちが話しながら通り過ぎて行く。
よく見れば、ハイリアは服の裾を強く握りしめながらふるふると小刻みに震えていた。その目にはじんわりと涙が溜まっている。
泣き出すのを堪えているらしい、ハイリアの身体に異変が起こり始めたのはその時だった。
震える身体からじんわりと淡く白い光が漏れ出して、きらめきだしたのだ。
身体から溢れ出したその光を見たとたん、ハイリアは涙目のまま走り出していた。
ガキどもが遊ぶ方向とも、広がる田園の方向とも違う、村の外れの方へと急いで駆けて行く。
その間にも、ぱちぱちと星のような光の粒が身体の周囲に集まり、白色の光が身体に灯る。
闇の空間で見た光と似たその光は、一面花が咲く草原にたどり着くなり急激に強く輝き出した。