第24章 緋色の夢 〔Ⅸ〕
うつむくハイリアの側で、ガキどもは集まって何かをこそこそと話すと、その中で一番背が高いガキがハイリアに向き合った。
『じゃあさ、「かくれんぼ」しようぜ、ハイリア』
遊びの提案を言いだした年長の男のガキは、何かをたくらんでいるような顔をしていた。
『ねぇ、ほんとにするの……? 』
『しっ! いいから黙ってろって……』
年長のガキの後ろの方から、くすくすとあざけ笑う声がいくつも聞こえてきたが、ハイリアは何も言わない。
面白がっているような周囲のガキどもを見渡して、目を伏せて、それからぽつりと呟いた。
『いいよ……』
『じゃあ、おまえが鬼な! ちゃんと数かぞえるんだぞ! 』
『うん……』
チビのハイリアはそう言って、その場に座り込み目を閉じて、「いち、にー」と数をかぞえはじめた。
その間にガキどもはくすくすと笑いながら、皆でまとまってどこかへ駆けて行く。
数をかぞえ終えて、「もういいかい」とハイリアが声をかけた時には、辺りには誰もいなくなっていた。
何度か同じように呼びかけるが、返答の声すら返ってこない。
ハイリアは黙って立ち上がり振り返ると、誰もいなくなったその場所を見て大きなため息をついていた。
『…………あそんでくれないなら、いいんだもん……』
とぼとぼと歩き出し、老婆が帰って行った道とは逆方向にハイリアは向かう。
農村の中に並ぶ、いくつかの家々を通り過ぎながら、ハイリアは軒先の奥をじっと見つめていた。
随分と離れたその場所で、先程のガキどもが駆け回っている姿があった。鞠のようなものを蹴り飛ばして遊んでいる。