第24章 緋色の夢 〔Ⅸ〕
木々が茂った小道を抜け、農村を駆けまわるガキどもの姿が見え始めると、老婆は声を張り上げた。
『おまえたち、ハイリアも仲間に入れてやっておくれ』
老婆の声を聞いて、駆けまわっていた数人のガキどもが立ち止まり、振り返った。
とたんにハイリアは老婆の後ろに隠れてしまう。
『ほれ、ハイリア。行っておいで』
『うん……、遊ぼうー? 』
老婆の後ろから顔を覗かせて、消え入りそうな声でハイリアは言った。
『……いいよ』
ガキどもの中で一番背が高いやつがそう言うと、周りにいるガキどもが意味深に顔を見合わせながらため息をついていた。
── なんだ? 歓迎されている雰囲気じゃねーな。
『夕方には帰るんじゃよ』
一緒にいた老婆がその場を去り、ハイリアが不安げな表情でその場に立ち尽くしていると、背の高い年長とみられる男のガキが目の前までやってきた。
『おまえ、今日はへんなことするなよ? 』
『うん……』
背の高いそいつが恐いのか、びくびくと怖気づいた様子でハイリアは言った。
『ねぇ、だいじょうぶなの? ハイリアちゃんがいると、まただれか……! 』
『ぼく、もう転ぶのやだよ……』
『しょうがねぇーじゃん。大ばばさまに言われたし! 仲間に入れてやらないと怒られるだろ? 』
『でもさー、こいつがいると怪我ばっかじゃん』
『いっつも変なことが起こるし……』
口々に文句を言いだしたガキどもの側で、ハイリアはうつむいたまま、ぎゅっと服の袖口を強く握りしめていた。
これから遊ぶようだというのに、泣き出さないように堪えている。
文句を言えば、いつもずけずけと言い返してくる今のあいつとは対照的な姿だ。
── おいおい……、どうしたんだよ? おまえらしくねーじゃん。
小さな真っ白なやつに言ってやるが、何の反応もない。黒ルフとなった姿は見えても声は聞こえないようだった。