第24章 緋色の夢 〔Ⅸ〕
── 繋がりをもつことなんて、身体を重ね合わせる以外にした覚えはねーんだけど……。
そんな繋がりだけで記憶が流れ込むような干渉にあうなら、今まで同じようなことが何度かあってもおかしくない。
そんなことは今まで一度もないのだから、恐らく別のことが関係するのだろう。
── まぁいいや、そんなことは起きたら、おまえの口から語らせればすむ話だしな……。
散々こっちに干渉してきたんだ。気に入らない隠し事なんて追いつめて暴いてやる。
にっとジュダルは口元をつり上げて笑みを浮かべた。
── 仕方ねぇーから付き合ってやるよ、ハイリア。おまえの過去の記憶とやらに。
キャラバンで生活していたこと以外、ほとんど話そうとしないあいつの過去に興味がなかったわけでもない。
あいつの秘密がわかるなら、それも面白い。
── 無理矢理引き込んだのだから、勝手に探らせてもらうぜ?
黒ルフとなったジュダルは、薬草を摘み取ることに夢中になっているチビのハイリアに後ろから近づくと、気づかれないようにそっと真っ白な髪の上にとまった。
『どれ、こんなもんかのう……。あまり取り過ぎても若草が痛んでしまうし、そろそろ帰るとしようかのう、ハイリア』
薬草の入ったカゴを持ち老婆が立ち上がると、その声を聞いてチビのハイリアもカゴを抱えて立ち上がった。
『うん! おうちにかえったら、おくすりつくるんでしょー? 』
『そうじゃのう。じゃが、おまえさんはお外で遊んでおいで』
『えーっ! ハイリアも、おくすりつくるのてつだうよ』
『お子は外で元気に遊ぶもんじゃあ』
『う~、おうちのなかがいい……』
『だだこねとらんで、今日も行っておいで。昨日は村の子らと「鬼ごっこ」をしてきたんじゃろう? 』
『……うん』
老婆に手を引かれ、村の方へと道を歩き始めたハイリアの表情は、なぜか浮かない表情をしていた。