第24章 緋色の夢 〔Ⅸ〕
目が回るような白色の光の渦に投げ込まれ、突風のような力に身体が勢いよく吹き飛ばされた。
視界が真っ白になり、逃れられない白の光の中に落ちていく。
気が付いた時には、ジュダルは青空を眺めていた。
── どこだよ、ここは?
今度はどこに来たのだろうかと思ったその時、ひょっこりと現れた白いものに覗き込まれて驚いた。
髪も肌も白い子どもだった。
腕に草花の入った茶色いカゴを抱えているそいつは、顔だちは幼いがハイリアとよく似ている。
どうやら、また、あいつの記憶の中に落とされたらしい。
いつもは砂漠地帯の白っぽい男装服を着ているハイリアだが、幼いこいつは違っていた。
身に着けているのは、煌で市民がよく着ている詰襟で袖が長いチーパオだ。
群青色のチーパオは、白い肌と肩でそろえた白髪が映えるこいつには、よく似合っている。
興味深そうにこちらをじっと見つめてくるブドウ色の双眸は、子どもにしてはやけに大きく見えた。
『くろいルフ~? 』
── ああ? 黒いルフだー?
幼いハイリアが発した言葉を疑問に感じて、自分の姿を確認したとたん黒い翼が見えて戸惑った。
いつの間にか半透明にあったはずの身体は消え、杖もなくなり、身体は小さな黒ルフの姿になっていた。
── おい、マジかよ!?
『へんなのー、なんでいろがくろいのー? 』
伸びてきた白い手に気づいて、ジュダルは慌てて空に飛び立った。
なんとか掴まれずに空高く浮かぶことができてほっとする。姿は気に食わないが動きは自由になるらしい。
黒ルフをつかみ損ねたハイリアは、下の方で悔しそうな顔をしながらしばらく空を見上げていた。
そして、側で草花を摘んでいる様子の老婆の元へ駆けると、身体を揺すりながら空を指さす。