第24章 緋色の夢 〔Ⅸ〕
その中へと飛んでいったルフを追いかけるように真っ白な光の空間に足を踏み入れたとたん、中心に横たわるヒト型の白い肢体が見えてジュダルは目を見開いた。
まさかと思い駆けだしたその先で、身体を丸くして横たわっていたのはハイリアだった。
眠っているようにみえるその身体は半分透けている。
氷のように透明感のあるその身体からは、淡い白の光が少しずつ漏れ出していた。
恐らく、闇を照らしていたのはこいつの光だ。
── おいっ、なんでおまえが……!?
横たわるハイリアを揺すり起こそうと伸ばした手が、身体に触れることなく埋まるように中へ呑み込まれて驚いた。
腕を引き抜こうとしたが、ハイリアの身体に埋まってしまった腕は、何かに掴まれてしまったかのように動かない。
ぐいぐいと奥に引っ張られて、身体が持っていかれそうになる。
── なっ!? ちょっ……待てよ、なんだよこれ!?
堪えようとしても、身体はどんどん引き込まれていく。
慌てて残っている腕で杖を取り出し、マゴイを宿したが杖は何の反応も示さなかった。これではただの飾りだ。
何かを掴もうと思っても、眠るこいつの身体以外は、側を飛び交っている小さなルフくらいしかない。
何をしてくれるわけでもなく、ピィーピィーと鳴き声を上げて周囲を飛び交う白ルフの姿が鬱陶しく感じた。
── くっそ、ふざけんなっ! 起きろ、ハイリアっ!!
声を荒立てるが、目を閉じている側近は一向に起きる気配がない。
引き込もうとしてくる力になんとか抵抗していたジュダルの脳裏に、何かの映像がいくつも流れ込んできた。
真っ白なルフ、赤子と、ビンに詰め込んで遊ぶ子どもの姿。あやす老婆と、農村を駆けて笑う子どもの声。泣いた声とともに風が湧き上がって……。
── これは、俺が見たあの夢の……!?
頭が痛くなるほどに様々な情景が頭に流れ込む中、身体はついに肩の辺りまでずるずると呑み込まれた。
── まさか、今までの全部……、おまえの記憶なのか……!?
ぐいっと力強く腕が引かれる感覚がして、急激に身体が傾いた。
どうにもならずに、ハイリアの中へと身体が呑み込まれる。