第24章 緋色の夢 〔Ⅸ〕
うっすらと目をあけると、漆黒の中に横たわっていた。
── どこだ、ここは?
起き上がって辺りを見渡したが、部屋でもなければ、空でもなかった。ただ、どこまでも続く闇の空間だと気づき、ジュダルは溜め息をついた。
── また、妙な夢の中か?
しかし、それにしては静かだ。いつものように勝手に景色が移り変わって行く様子もない。
半透明だが身体はあるし、懐には杖まで入っていた。
── どうしろってんだよ……、こんな場所で……。
面倒な気分になりながらあぐらをかいて座り込み、四方八方闇に囲まれている空間を見渡していると、黒の中にわずかに光る白の一点を見つけた。
目を細めて見つめるうちに、それが一羽のルフだとわかる。
ひらひらと白い光をきらめかせて飛ぶ真っ白なルフは、ゆっくりとこちらに向かい飛んでくると、「ピィー」と鳴き声を上げながら身体の周りを飛び交った。
鬱陶しいくらいに、ちょろちょろと周りを飛び回る。
── なんだこいつ、うざってーな……。
いつまでも離れない一羽のルフに苛立ち掴み取ろうとしたが、上手くかわされた。
避けた白いルフは、急に側を離れてどこかへ向かい飛んでいく。
闇の空間に、真っ白なルフが羽ばたいた光の痕跡が星粒のように残った。
── そっちに行けってか?
呼ばれているように感じて、ジュダルは立ち上がり、そのルフのあとを追いかけた。
ひらひらとルフがきらめかせる白い光をたどり、ひたすら闇の中を歩く。
ルフが示す道を歩いて行くと、何もないように思えた闇の奥にかがり火のようなぼんやりとした光が見え始めた。
闇を晴らすその光は、辺りを包む漆黒とは対照的に白く、柔らかな光だった。