第24章 緋色の夢 〔Ⅸ〕
「さて、あなたが杖をお持ちでないせいで、無駄な時間を過ごしてしまいましたが、杖がなくては何も始められません。とりあえずは、これを使ってください」
覆面の男に手渡された杖は、『銀行屋』たちがもつ杖と同じ、身長の高さほどもある大きな杖だった。
「ありがとうございます……」
── 大きな杖。こんな杖、初めてもつな……。
手にした長杖が物珍しくて、ハイリアがまじまじと見つめていると、男の大きな咳払いが聞こえた。
「では、早く行きますぞ! 新入りであろうと、あなたにも色々と手伝ってもらわなければ……。まだまだ、準備にやることがたくさんあるのですから」
「あ、はいっ……! 」
急ぎ足で歩き出した覆面の男に置いて行かれそうになり、ハイリアは慣れない杖を握りしめると、男の背を追って書庫の外へと飛び出した。