第24章 緋色の夢 〔Ⅸ〕
「でも、ちょっとだけ考えちゃった。もし、魔法使いになっていたら、私ってどうなっていたのかな……?
もしかしたら、あなたとも会わなかったのかもしれないのよね。そう考えてみたら、すごく変な感じがするんだけれど……」
魔法が使える一人として、今と全く違った生き方をしていたら、自分はどんな風になっていたのだろうか。
もしかしたら、あの大火の出来事からも、村の皆を助けられたのではないだろうか。あの時にムトたちを助けることだって……。
ない物ねだりだけれど、魔法が使えたらと考えて、一番最初に思ったのは、そのことだった。
でも、もしもそれができていたら、アイムとも、当然ジュダルとも会わなかったのかもしれない。
そう考えたら、寂しいような感じがして嫌だとも思った。
『……あなた様は、私を手にされたことを後悔しておりますか? 』
突然、アイムに変な事を聞かれて驚いた。
向けられていた真摯な眼差しを見て、ハイリアは微笑んだ。
「してないわ。あなたがいるから、今の私があるんだもの。金属器のおかげで、出会えた人たちがたくさんいるし、この国で居場所も作れたわ。
あなたこそ、私を選んだことを後悔しているんじゃない? 」
『何をおっしゃいますか? 』
「だって、私は王の器なんていう大層な器じゃないもの。王族でもなければ、何かの功績を上げたわけでもない……、それなのに大きな力を手に入れてしまったタダのヒトよ。間違ったことだってたくさんしてる。
今だって……自分勝手な思いに、あなたを巻き込んでるわ……」
『……我が王よ、私があなた様を選んだことに、後悔したことなど一度もございませんよ。
確かに我が王は、危険も顧みずに無茶なことばかりされますので、気が気でないと感じることもありますが、あなた様の道筋には温かな変調がみられます。
迷われながらも進まれるあなた様が、どのような変革を生み出すのか私は見てみたいのです』
「アイム……」
『過ちを恐れますな、あなた様の望むままにお進み下さい。私はそれに付き従います。例え道を踏み外そうと、あなた様なら正しき道へと直され、進まれるはずだと信じておりますから』
慰めるような優しい声の響きに、なんだか胸が温かくなるのを感じた。
「ありがとう、アイム。付き合わせて悪いけど、少し力を貸してね」
『もちろんですとも』