第24章 緋色の夢 〔Ⅸ〕
「どうにかはしたい……、あのルフの闇は良くないかんじがする。あんな『神事』を続けていいはずがないわ。
どうしたらいいのか、まだ考えきれてはいないけれど……。でも、誰かに協力を仰ぐにも、まずはこの組織のことを知らないと何もできない。
宮廷にどれだけ味方がいるかもわからないんだから……! 」
黒ルフを渦巻かせていた皇后を思い出して、ハイリアは強く拳を握りしめた。
『お願いですから、無茶はなさいませんように……。お一人でできることには限度がございます……』
「わかってるって……。アイムは、ほんとに心配性だね」
くすりと笑ってハイリアは、本が積み重なっている机の方へと足を向けた。
「それにしても、すっごい散らかりようね……。宮廷の倉庫の片付けを手伝った時だって、ここまでひどくなかったわよ……」
さっさと掃除をして、部屋を整頓してしまいたくなり、身体がそわそわとする。
床と机の上に積み重なった本を棚に戻して、散乱した紙を整え、床を掃き、こぼれたインクを綺麗に拭き取ったら、きっと部屋は様変わりするはずだ。
積み重なる書物の合間に広げられた紙の一つに、複雑な図形が描かれていることに気づき、ハイリアは目を止めた。
幾重にも円が重なる星の図形だ。その図面の側には、何かの数式が書かれている。
「これ……、もしかして魔法陣……? なんでこんなもの紙に書いて……」
『魔術書を作っていたのでは? 』
「魔術書……? 」
『魔法の研究資料のようなものです。
魔法とは、魔力を使い、炎や雷、嵐といった、ルフが生み出す自然現象を体現する方法です。
どのような命令式を組み、魔法を作り出すかは、魔導士それぞれが考えて行っている事なのですよ。
複雑な命令式を組むほど大掛かりな魔法が使えますが、魔法陣が必要となることもあります。
魔力の量はそれぞれ違いますし、複雑な命令を組むほど力が分散していきますから、陣を書いたほうが安定するのです。
完成した魔法や魔法陣は、魔導士それぞれが書きとめて保存します。そして、それを元に、また新たな魔法を考え、作り出していく。
そういったものが集まって出来たものが魔術書となるのです』
すらすらと、アイムが説明をした。