第24章 緋色の夢 〔Ⅸ〕
慌ててアイムが宿る腕輪を袖の奥へ押し込んで振り返った先に、広間に入ってくる三人の『銀行屋』の姿が見えて困惑する。
「おや、わたくし達が一番かと思いましたが、先を越されていましたな」
「まあ、久しぶりの実験ともなれば、早く来たくもなりますからねぇ」
「今回の被験体は上手くいけばいいのですが……」
こちらへ歩いて来る『銀行屋』たちの姿に、鼓動がバクバクと高鳴っていた。
こんなに早くこの人達と対面するとは思っていなかった。
相手にも心臓の音が聞こえるのではないかとヒヤヒヤとしたが、従者の格好に変装していることもあってか、特に気にされる様子もない。
驚き固まっているハイリアの側を『銀行屋』の三人がまっすぐに通り過ぎて、八芒星が描かれた魔法陣の方へと歩いて行く。
「何をしているのですか? 早く行きませんと、準備もありますから……」
突然、『銀行屋』の一人が振り返り、こちらに声をかけてきたから戸惑った。
よく考えれば、不自然に黙り込んで突っ立っている状況だと気づき、ハイリアは慌てて足を踏み出した。
彼らについていくように魔法陣の方へと急ぐ。
「なんか鈍くさい方ですね……。こんな小柄な方、いましたっけ? 」
男の言葉に心臓が跳ね上がった。
確かに男たちと比べ、一人だけ頭一つ分どころか、二つ分抜けるくらいの身長差がある。体格差でバレてしまうのではないかと冷や汗が出た。
「もしや、例の新しく入られた方では? 」
「新しく入られた? ……ああ、そういえば最近こちらへ来られた方が一人いましたっけ。面倒ですね、今日はその方も実験メンバーに入っているのですか? 」
「いちいち確認しませんからわかりませんが、そのようですねぇ。仕方がありませんよ、誰かが教えてやらねばならないのですから……」
こちらに声をかけてきた男が、側にいる覆面の男二人と話しながら顔を見合わせて、ため息をついていた。
なんだか知らないが、運よく勝手に自分のことを、彼らの組織に加入した新人だと勘違いしてくれたようである。