第24章 緋色の夢 〔Ⅸ〕
「私が魔法を……? 」
そんなことを言われたのは、初めてで驚いた。
「……わからないけど、魔法を扱えたなんて思ったことは一度もないわよ。
だって、あなたを迷宮で手にするまで、私は魔法が本当にあること自体知らなかったんだもの……」
魔法なんて噂に聞くくらいだったし、本当にあるのかも疑わしいと思っていた。
ジュダルと出会うまで、魔法使いが実在することも知らなかったくらいなのだから。
『そうでしたか……。しかし、あなた様はルフが見えます。ルフと語らうことができるという素質をもつこと自体が、あなた様に魔導の素質がある証です。
気づいていらっしゃるかわかりませんが、あなた様が扱うマゴイ操作は、魔法を起こす際にルフへ送るマゴイの命令式とよく似ています。
マゴイの流れを感じ取り、増減させる以外に、あなた様は別のことを考えてマゴイを扱っているのではないのですか? 』
「別のことを、考えて……? 」
ジュダルの黒ルフに宿した、白いマゴイの光をぼんやりと思い出した。
── 確かにルフを操作する時には、マゴイを通して指示を送る順序を考えたりはするけれど……。
他に何を考えてマゴイを扱っていたかなんて、いちいち覚えていない。
幼い頃に覚えたマゴイ操作は、ほとんど無意識にできるようになっている。
その方法がいきなり魔法を起こす時に似ていると言われても、違いがよくわからなかった。
金属器を通す以外での魔法を扱う感覚なんて、知らないのだから。
── そんな魔法らしいことをした覚えだって……。
ジュダルに杖を持たせてもらった時だって、何も起こらなかったのに。
ぐるぐると記憶をめぐった先に、ふと幼い頃に見た白い光をまとう荒風が思い出されて、ハイリアは戸惑った。
── でも、あれはマゴイの源が乱れただけだってムトが……!
思い出した白の情景を考え込んでいたその時、ガタンッと勢いよく扉が開かれる音が響いて、ハイリアは驚いて身を震わせた。