第24章 緋色の夢 〔Ⅸ〕
「黙ってないで答えてよ……」
『ですが、あの時は、私も慌てていましたゆえ……勘で動いていたこともございますし……。聞いても、気分を害されるだろうかと……』
「わからない方がずっと嫌よ」
『しかし……、あなた様にお伝えすることが果たして良いことなのか……』
「かまわないから話して! 私について来てくれるんじゃなかったの? 」
中々話そうとしないアイムの声に苛立ち、従者の衣装の袖下に隠している銀の腕輪を引っ張り出すと、困ったように揺らぐ金色の瞳が浮かんでいた。
じろりと睨み付けたとたん、大きなため息が聞こえた。
『……そうお怒りになられますな、我が王よ。お話いたしますとも、あなた様が望まれるなら……。私がお話することで、混乱されるだろうとは思いますが……。
なぜ黒ルフも持たずに扉が開いたのかと申されれば……、あなた様がその鍵となられているからとしか、言いようがありません』
「私が鍵……? 」
『はい……、この扉は本来、黒ルフを宿す組織の者だけが開けるよう魔法が施されています。部外者の侵入を防ぐためでしょう。
しかし、あなた様はこの扉を開くことができる。なぜなら、あなた様のマゴイが、この扉に術式を施した従者らとよく似た性質をお持ちだからです』
「似てる? 私のマゴイが……? 」
『マゴイの質が似通っているのですよ。あなた様は、あの者たちと……。
術者と近い性質をもつマゴイに、魔法が反応を示すことはございます。
似通った性質をお持ちになるあなた様のマゴイならば、扉が反応を示し通れるやもと、あの時は思ったのです。実際にそれで開くことができました。
なぜ黒ルフも持たずに扉が開いたのかと申されれば、それが答えです』
「何それ……、私のマゴイが『銀行屋』と似ているおかげで扉を通れたっていうの? 」
不愉快に感じて、ハイリアは顔をしかめた。胸の中がもやもやとする。
『ですから、気分を害されるだろうと言いましたのに……。ですが、あなた様のマゴイからは、あの者たちと同じ魔導の香りが致します』
「魔導の香り? 」
『私は鼻が効きますので……。あなた様のマゴイの質は、どちらかといえば魔導士よりなのです。それゆえ、あの者たちとも近しいのかと……。
元来、あなた様は魔法が扱えたのではないですか? 』