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【マギ*】 暁の月桂

第23章 緋色の夢 〔Ⅷ〕


さすがに入り口の扉に親父どもの姿はもうなかったが、八芒星の図面を超えた先には、まだ数人の姿があった。

広間の扉の前で、何やら話し込んでいる。

すぐに、こちらに気づいた覆面の男たちと目があった。

「おや、『マギ』よ。お戻りになられるとは珍しいですな」

「侵入者の件でしたら、まだ正体はわかりませんぞ」

「そんなことはどうでもいい。それよりおまえ達に聞きたいことがある。『十年計画』とやらの被験体に刻まれてる八芒星があるだろ。あれに仕掛けてある魔法はなんだ? 知ってんだろ? 」

聞いたとたん、親父どもは顔を見合わせていた。

「知ってはおりますが……」

「……あの王に何かございましたかな? 」

「いいから早く答えろよ。あんな仕掛けがあるなんて俺は聞いてねーぞ。あれは、ルフを汚すだけか? どこまでの術がかけてある? 」

「術と申されましても……大したものでは……」

「あれは、失敗しましたし……」

ぶつぶつと中々、話し出さない親父どもにイライラしていると、そのうちの一人がようやく口を開いた。

「まあ、ルフを汚すだけといえばその通りですな。あれは『十年計画』の被験体に刻んだ呪印ですから」

「呪印? 」

「はい、『十年計画』は回収した被験体を堕転へ向かわせる実験でしたので、あの印には被験体を堕転へ傾けるような術が施してあります。
 一度、術が発動すれば、被験体のルフが日に日に濁り、負の感情が高まるように働きかけるのですよ。ルフが黒く染まるごとに、過去の恨みや怒り、悲しみを思い出させ、情動に敏感なり行動が衝動的になるのです。感情を抑えられなくなる魔法とでもいいましょうか」

「ほんとにそれだけかよ? あれのせいで勝手に、堕転するようなことにはならねーのか? 」

「それはありませんね。本来は恨みを増幅させ、そこまでの機能があればよかったのですが、他の実験体が堕転に失敗しているくらいですから……」

「なぜそこまで、あの王のことを気にされるのです? 期日があるとはいえ、まだ遊ぶ時間はたくさんおありでしょう? 」

親父どもが、不思議そうに顔を見合わせていた。
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