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【マギ*】 暁の月桂

第23章 緋色の夢 〔Ⅷ〕


「……え、ちょっと……、まだ仕事が……」

「そんなもん、やめだ、やめ! そんな身体で無理してどうすんだよ! 」

「大丈夫だってば……、戻ってよ……! 」

ぐったりしているくせに降りようとしているのか、ハイリアは手足を少しばたつかせた。

力が入っていない抵抗は大したこともなく、痛くもかゆくもないが、こいつの仕事バカっぷりに呆れて溜息が出る。

「俺がいやなんだ! いいから黙って従え!! 」

声を張り上げて言い聞かせると、ようやくハイリアは抵抗を止めたが、納得していないのかむくれていた。

── ったく、休むってことを知らないのか、こいつは!?

ハイリアを抱えながら書簡庫を出て自室へと向かっていると、いつものようにすれ違う官吏や下官たちが礼をしてきた。

特に変わらない光景だというのに、官吏たちに抱かれている姿を見られたくないのか、恥じらい始めたハイリアの頬が赤く染まっていく。

顔を隠すためか、徐々にこちらへ身体を傾けてきたから笑えた。

大人しくなったハイリアを抱えて、自室の前で立ち止まったとたん、静かにしていたハイリアが急に騒ぎ始めた。

「待って……、ここ違う! 私の部屋……、もっと奥! 」

「うるせぇーやつだな。いいからここで休んでけ! 」

「いやだ……! 絶対また、やらしいこと……、考えてるもん! 」

今朝のことがあったせいか、ハイリアは頑固だった。

「まあ……、ぜってぇ違うとは、俺も言えねーけどな……」

「ジュダルっ……! 」

抵抗する力もないくせに、ハイリアは睨み付けてきた。

「けどよぉ、おまえの部屋はだめだ。あの部屋にいたら、おまえは休めねぇーだろうが。おまえに仕事を頼みにくる官吏たちが来たら、おまえ絶対動くだろ? 」

「……それは、だって……」

「だって、じゃねーよ! 今日は休めって言ってるんだ。そんなふらふらの身体で動いたら、どうなるかわかるだろ!
 だから、俺の部屋だ。ここなら邪魔な官吏も入って来ねーしな。文句言わねーで、こっちで寝ろ! 」

納得したのかしてないのか、複雑な表情を浮かべてハイリアは黙り込んだ。
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