第23章 緋色の夢 〔Ⅷ〕
回廊を抜けて、宮廷の廊下に入り込むと、ジュダルはどこかへ行っているだろうハイリアの姿を探すために、目に力を込めた。
マゴイの多い奴らを探し出し、その中から金属器の気配をたどって、おかしなことに気づく。
ハイリアの気配がない。
── ああ? どうしてあいつが見当たらなねーんだ?
あいつは征西部隊に加えられたこともあって、稽古だの、軍事の勉強だの、拘束された時間が多くなり、宮廷を抜け出す暇なんてないはずだ。
── どこにいる?
仕方なく、あいつの金属器を直に探してみると、ようやく『アイム』の気配を見つけ出した。
しかし、やけに反応が小さい。
その反応をたどり、かすれるような白いマゴイが見えて、ジュダルは目を疑った。
── なんであいつ、マゴイが!?
消えそうなほどに細い光を見つけて、ジュダルは走り出した。
居場所は、書簡庫だ。
書類整理でもしているのだろうか。
廊下を歩く邪魔な官吏たちを突き飛ばして進み、たどり着いた書簡庫の扉をジュダルは勢いよく開けた。
「ハイリア! 」
部屋に足を踏み入れた瞬間、奥の机に伏している姿が見えて駆け寄った。
珍しく首周りに白のストールを巻きつけているハイリアは、片付け途中らしい書類の側で眠っていた。
すーすーと寝息をたてているが、その顔はやけに青白い。
「おい、ハイリア!! 」
強く身体を揺すると、ようやく目を開けた。
ぼんやりとしたブドウ色の瞳が、こちらを動き見る。
「ジュダル……? ごめん……、寝ちゃってたみたいで……」
言いながら身体を起こしたハイリアは、ふらつきながら椅子の背もたれに寄りかかり、深い息をついていた。