第23章 緋色の夢 〔Ⅷ〕
従者の一人を置いて、親父どもでごった返している広間の扉へとジュダルは駆けた。
足音を聞いた親父どもがこちらを見て、道を開ける。
「ああ、『マギ』よ! 足元にお気を付けて」
── 足元?
親父どもが何かを調べているらしい床に、きらりと光る破片が見えた。
── なんだ、ガラスか……。
細かく割れた破片がいくつか床に落ちているようだった。
興味をなくしてジュダルは床を蹴り、浮遊魔法で一気に飛び越えて八芒星の図面の上に乗った。
薄暗い部屋から一転する白い部屋へとたどり着くと、そこにある扉の前にも覆面の男たちが何人かいてうんざりとする。
── まだいんのかよ、邪魔くせぇーな……。
「おい、通るからどいてくれよ」
「これは失礼を……」
覆面の男たちがどいた扉を通り抜け、ようやく見えなくなった親父どもに呆れた。
── 姿が見えねーくらいで焦って、バカみてぇーだぜ……。
今までだって裏切り者はいたが、いつも処分されて壊れた傀儡に戻っていた。どうせ今回も同じだろう。
くだらない侵入者なんてどうでもいい。
くっついてきたかと思えば、急に離れだす、ワケのわからないあいつの方が、ずっと気がかりだ。
こちらの策略通りになったかと思わせて、結局、あいつは予想に反して振り回してくる。
それがあいつの面白いところでもあるわけだが、あいつのペースに巻き込まれていたら、堕転させろと決められた期日までなんてあっという間だ。
自分から目が離せなくなるように教え込ませていたつもりが、逆にあいつに振り回されて、いつの間にか、こちらが手玉に取られていたらしゃれにならない。
ふと、柔らかな笑顔を浮かべるハイリアの姿が浮かんで、胸の奥が疼いた。
わずらわしいような面倒くさい気分になり、舌打ちする。
── おまえは俺のもんなんだ。それだけは譲れねぇ。わかるまでその身に叩きこんでやるからな。