第23章 緋色の夢 〔Ⅷ〕
『あー! あいつ、また変なことしてるぜー』
『ほんとだー。なにもいねぇービンみて笑ってる。気持ちがわりぃー! 』
けらけらと笑うガキの声がして、そいつは声の方へ顔を向けた。
からかってきた奴は、ルフを覗き見ていたそいつよりも少し背が高そうなガキどもだった。
二人の男のガキと、側で困ったように縮こまってる小さな女のガキが一人見える。
『ルフ、いるのー! 』
からかわれたのに腹を立てたのか、そいつは声を張り上げていた。
意地になったところで、ルフが見えない奴にはただのガラス瓶にしか見えないだろうが、このガキはそういうことが、まだよくわかっていないらしい。
『また、うそついてる~! 』
『そうだ、そうだ、うそつき~! 』
『うそつき、ちがうー! 』
『ねぇ……、やめようよ……。大ばば様に怒られるよ……』
からかう男のガキどもの腕を引きながら、女のガキがぼそぼそと言っていた。
『そうやってれば、大ばば様がかまってくれるから、やってるんだろー? 』
『ほんとは、なにもいねぇーくせに! 』
『きれぇーなの、いるもん! 』
ムキになって、そいつが叫んだ。
『このまえも、ひとりで走って、笑ってたもんな』
『あたまがおかしいんじゃねぇーの。気持ちわりぃー』
『おかしく、ないもん……! 』
泣きそうなのか、そいつの声が震えていた。