第23章 緋色の夢 〔Ⅷ〕
ふわふわと浮き立つような白い場所にいた。
そのくせ身動きが取れない感覚に、夢の中にいるのだとわかった。
── なんだよ……、また妙なもん見させられんのかー?
面倒くさい気分になり、顔をしかめているとジュダルの見ていた景色が変わっていた。
白い景色が遠ざかり、気づけばジュダルは新緑に包まれた農村を駆けていた。
といっても、自分が駆けているわけじゃない。
よくわからない奴が見ている景色を、そいつの目を借りて見ているにすぎない。
走っているそいつが見つめているものは、白いルフだった。
『まて、まて、まてぇー! 』
目線の低さと独特の高い声で、子どもなのだとわかる。
白いルフを追いかけているらしく、迷惑そうに鳴き声をあげるルフの声が聞こえた。
必死で逃げるルフも、とうとう疲れてきたのか速度が落ちて、距離が近づく。
そこへ腕を伸ばした白い手が、勢いよくルフをかすめ取った。
「ピィー」と騒がしく鳴くルフの声が響く。
『つーまえた! 』
嬉しそうに笑いながら、ルフを掴むそいつの肌の白さに気づき、ジュダルは驚いた。
透き通るような白い肌は、まるでハイリアのようだ。
そいつは捕まえたルフをガラス瓶の中に放り込むと蓋をして、中で迷惑そうに羽ばたいている白いルフの姿を覗き見ていた。
『きれぇー……』
キラキラと眩いほどに輝くそのきらめく羽根が気に入ったのか、ガラス瓶をくるくる回している。
慣れた様子からきっと、この子どもがいつもこうやってルフで遊んでいるらしいことが想像できた。
── 変なガキ……。ルフが見えるってことは、魔導の素質があるやつか?