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【マギ*】 暁の月桂

第23章 緋色の夢 〔Ⅷ〕



── あの扉の先が『神事』を執り行っている場所なのだろうか。

黒いルフの姿を見つめながら、ハイリアは引き寄せられるように扉へと歩み出した。

周囲は違和感を覚えるほどに人の気がない。

誰かが歩いてくる気配すらなくて、気持ちが悪いくらいだ。

変装をしているとはいえ、一人静けさに包まれた薄暗い場所で足音を響かせていると、誰かに聞こえているのではないかと恐くなる。

自然と足音を消し、息をひそめていた。

たどり着いた扉は、古びているのか灰色に見える。

重厚感のある石造りの扉に手を添えてみたが、特に何も起こらなかった。この扉には、何か仕掛けがあるわけではないらしい。

ほっとして扉にとまる黒いルフに目を送ると、こちらを気にする様子もなくパタパタと羽根を休めていた。

胸の鼓動が速まるのを感じながら、ハイリアは慎重に重そうな扉に手をかけた。

ゆっくりと扉を押していくと、ギシギシと軋む音をたてたからひやりとした。

隙間から漏れた光が、自分の顔を照らし出す。

奥の部屋は、今いる場所よりも明るいようだ。

わずかに開いた扉の隙間に顔を近づけて、ハイリアは部屋の様子を覗き見た。

中は巨大な円状の広間となっているようだった。

厳かな雰囲気をもつその広間に、覆面の従者たちが円陣を組むように列を作っていた。

段を作りながら並び立つ、『銀行屋』の数の多さに、息をのむ。

十数人なんて人の数ではない。百をゆうに超えるだろう人数が円をつくり、集まっていた。宮廷にこんなに『銀行屋』がいただろうか。

従者が取り囲む中央には、大きな八芒星が床に描かれている。先程、白い広間で見かけたものよりもずっと大きなものだ。

そこへ近づく一つの黒い影を見つけて、ハイリアは目を見開いた。
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