第23章 緋色の夢 〔Ⅷ〕
描かれている星は、八芒星だ。
部屋の中枢に大きく描かれた八芒星は、どこかで見覚えがあるような気がする。
── この図面、どこで……?
頭に引っかかりを覚える感覚を頼りに、記憶を探っていた脳裏に唐突に青い炎が浮かんできて、その図面がある場所を思い出した。
袖をまくり見た手首にはめられた銀の腕輪には、やはり同じ星の図面が描かれていた。
見たことがあって当然だ。毎日共にいて、稽古で発動するたびに光る星の形を忘れるはずなんてないのだから。
── ってことは、これは魔法陣?
金属器を使う時に光る、八芒星の姿が思い浮かんだ。
緊張しながら、ハイリアはゆっくりと八芒星の中に足を踏み入れてみた。
しかし、星の図面は何の反応も示さない。しゃがみこんで、絵柄が掘られた凹凸の線に手で触れてみても同じだった。
黒いルフは手元にある。
扉と同じように、この黒いルフを有する者しか入り口を通れないのであれば、条件がそろった今、きっと八芒星は反応を示すはずだ。
── 他に何が足りない?
八芒星にとまる黒いルフが、羽ばたきを繰り返しているのを見つめながら、ハイリアは考えた。
思考を巡らせる中、漆黒のルフを宿す彼らの姿が浮かんだ。
── 魔導士……、マギ……。
ジュダルは『神事』には魔導士が関わるのだと言っていた。
この先で関わる者は、魔法を扱える者たちだ。でも、自分だって金属器を使えば魔法は扱える。
── もしかして……。
頭に浮かんだ方法はひどく単純だ。こんな方法で上手くいくのかはわからない。
けれど、もしかしたら反応を示すのかもしれないと思った。
金属器と同じ魔法陣なのだ。発動するには……。
── 自分の魔力を……。
ハイリアは描かれた星の図面に向かって手を伸ばした。