第23章 緋色の夢 〔Ⅷ〕
「神官殿? 起きていらっしゃいますか? 」
部屋に男の声が響く。
扉を開けられてしまいそうで恐かった。こんな姿見られたくない。
攻めるような深い口づけは、空気さえ奪い去り、指先が痺れ出す。
再び、ジュダルを押し離そうと試みたとたん、許さないとでも言うように舌先を強く吸われて引き寄せられた。
奪われるような刺激が駆け抜けて、力が抜ける。
何度も繰り返されて脱力感が身体を襲い、彼の服を掴む羽目になった。
すがるような恰好となり、なんだか悔しくなる。
「神官殿……? いらっしゃらないのですか? 」
従者の声がまた響き、今にも扉が開きそうで恐かった。
息が上手く出来なくて、頭がぼうっとし始めた。
とろけてしまうような熱い刺激に、身体が麻痺して熱を持ち、感覚が研ぎ澄まされていく。
頬が火照り、息苦しいのに、どこかに浮いているよう。
まるで水の中にいるみたいだ。
上も下もわからなくなって身体が呑み込まれていく、溺れる前の感覚に似ていた。
ゆらり、ゆらりと揺れる水面が見えるのに、きらめく光がつかめなくて、もがくほどに身体が熱くなり沈んでいく、あの時に。
舌先がぴりぴりと痺れて、視界がかすんだ。
── ああ、だめ……、もう息が……。
滲む視界に、赤い光を感じて目を閉じた。
水の中に落ち込むように意識が遠のいたとたん、身体が崩れ落ちていた。
温かいものに引き寄せられて、ぼんやりとした意識の中で寄りかかる。
息苦しさから解放されて、痛いほどに熱い空気にむせこんだ。
痺れた身体は火照り、上手く力が入らない。
乱れた呼吸と速まる鼓動が、やけに強く聞こえる中、扉が開く音がした。